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執筆者の写真Furuya Hirotoshi

世界はEQマスタリングが最先端


SPLのエンドーサーとして、ボス的な存在のBobさんが答えるインタビュー動画です。SPL社がフィーチャーした動画として、Facebook上で回ってきたのでご紹介したいと思います。

彼のキャリアは素晴らしいですし、これまでの功績というものも相当なものです。しかし、機材は更に先へと真価を果たしており、既に一世代前のマスタリングを行う方かと思います。そうした背景はあるにせよ、彼のチェインを見ることは非常に有用です。ひと目で気づくのは、コンプレッサーが全くと言って良いほどに見当たらないことです。唯一以前持ち合わせていた、Rupert Neve Bus compressorもなくなってしまい、今やMillenia Twincomがやっと一台見当たるくらいです。こうした中、この機材の構成というものは何を意味するのかを悟ることが出来ます。これまでにも再三に渡り様々な場で述べてきていますが、世界のマスタリングはその殆どがコンプレッサーやリミッターを用いていないという事実です。Bobさんの場合は、ステレオメインのEQにSPL PQ、Manley Massive Passive、そしてGML 9500を用いており、更にはサラウンド用にManleyとGMLを4ch分ハードギアとして導入しているのが伺えます。

このハードギアのEQを用いるマスタリングは、勘でどうにかなるものではありません。非常に芸術的であり、感性こそが全てを司るEQマスタリングは、国内で行われている場は当スタジオのみと言っても過言ではないでしょう。それは機材が物語っており、特定のラージフォーマットのEQでのみ可能なマスタリングであり、国内とは根本的な考え方が余りに異なるために、導入される機材からその使用方法までもが異なっている現状を垣間見ます。コンプレッサーは質感や肉質というものに立体感を与えるものであり、音圧なるものを上げるためのものではありません。そもそもEQマスタリングが上手にできるのであれば、必然的に音圧は上がってしまいますし、SPL社に至ってはプロダクトマネージャーのサーシャから、

『IronはマイナスGainでのコンプレッションをお勧めするよ。そちらのほうが、立体感がより増すからね』

という発言も聞かれたほどです。そうすると、EQとコンプレッサーの使い方そのものが、これまで良しとされてきた国内での考え方は真っ向から否定されることとなり、再度本国ではどのような使用方法、並びに哲学で音の調整を行っているのかを勉強し直す必要があるのかと思います。

また、今後国内の音楽市場は国境を意識しての動きのみではやっていけなく、確実にグローバル化するのは時間の問題です。その時に、日本の音、世界の音というものは存在しなくなっていくでしょう。グローバル・スタンダードに準拠するときには、EQマスタリングで音作りを行えないと、手も足も出ないという状況も考えられます。音の感性を最も重要視されるEQマスタリングは、これからの主軸となる手法であると共に、最も能力や才能というものが全面的に出るマスタリングでもあります。

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