ドイツへ修理に出していたサウンドカード、Marian Seraph M2が帰ってきました。随分と長旅でしたが、新品と結局交換ということで、正直なところ日本では受けられないようなサポートを、本国と直接やると対応してくれます。うちも代理店をやっていますが、正直なところ国内の代理店というのはサービスが非常に悪いのは認めざるを得ません。特に保証期間に関しては、ヨーロッパ・アメリカ共に最低3年を設定しており、長ければ5年ということも頻繁です。地球が情報化社会の発展でここまで狭くなり、1週間もあればヨーロッパと機材を行き来できてしまうこのご時世で、今後完全に直接取引が前提となることも考えられます。そうした場合に、何かしら国内側としてはより魅力的なサービスを展開するなど、策を考えていく必要もあるかと思います。
さて、アフターフォロー含め、世界の流れについてはこのくらいにして、Marianについてです。日本ではほぼ無名と言っても過言ではないDDコンバーター・サウンドカードですが、MADIで384kHzを送受信できる唯一のカードでもあります。設計は相当に古く15年も前のものをそのまましようしていますが、何とファームウェアのアップデートのみで384kHzに対応してきたという、とんでもない機材でもあります。この辺りのドイツ人の優秀さというものは、毎回驚かされます。また、PCIeという利点を生かして、最大128chの大容量をやり取りできると共に、動作の安定性というものはとてつもないものがあます。なんと384kHzでオーバーダビングを可能とするなど、一体何をどうすればこんな離れ業が出来るのか?驚き以外の何物でもありませんでした。
また、僕の場合はSeraphとSPL社のMADISONをMADI経由で繋いでいましたが、双方音に何も味付けがないというか、本当にただ広大な『場所』のみを提供してくるような音作りをしているので、何にも頼ることができない不思議な感覚を当初はうけました。例えばRMEだったりすると、かなりハイゲインでHi-Fiをアピールしてくる感じですし、AVIDであればあの独特な乾いたProToolsのサウンドが印象的ですが、Marianの場合は本当に何もありません。色付けが無さ過ぎて迷子になりそうな感覚というのは、説明のしようのないものがありますが、これが慣れてくると、とことん可能性のみを感じるようになっていきました。つまりは、ハードギアでガンガン音を作っていった折には、一切の干渉をしてこないので自由に音像を自分でコントロールできますし、何をどういう味付けで自分のマスタリングを終止させたいのかを明確にもできます。例えば先に挙げたRME社の場合、自らが既に音を持っているので、味付けの濃いハードギアだと必ず音作りには干渉してきます。あくまでRME社の作った土俵の中での勝負という感じがして、当初はその土俵を頼りにレコーディングやマスタリングを行っているので、土俵の外に出ることは許されないような感覚を覚えています。
伝統あるヨーロッパのマスタリングスタジオでも、このMarianを優秀な機材として挙げる人は多くいます。RMEのDigiface Danteは、どちらかというとDanteとMADI、そしてUSB経由でのレコーディングが可能ということで導入を決めましたが、やはりこのMarianがうちのスタジオにとってはメインのサウンドカードとしてあり続けることには変わりないかと思います。
因みに今回Marianが壊れたのは、車にPCを載せて右折時に思い切りPCを倒したが故のものでした。PCのメモリ、マザーボードも壊れましたから、PCIeカードも壊れるのは当然のことだったかと思います。
明日からの仕事が、また楽しみです。
Comentarios