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執筆者の写真Furuya Hirotoshi

国内と欧米の音を改めて考える

マスタリング・グランドピアノ中古・スタインウェイ

ここ数日間の業務で、中古スタインウェイ・グランドピアノの検品から、昨日はマスタリング参加作品であるドイツのDie Denkazのリリース、そして同日にC3グランドピアノのオーバーホールの最終整音と、仕事を重ねれば重ねるほどに、自分の中に蓄積されるものは、日本と欧米で作られる音の違いがあまりにも大きいことと、さらには求められる音の質も違うということです。この開きはかなり大きく、如何ともし難い程に落差があります。 Die Denkazの楽曲は、自分のマスタリングが本当に正しかったのかを確かめる意味でも、相当数を再度聴き直しました。ドイツ語は全くわからないのでSNSなどで述べられる彼らへのコメントは、何を言っているのか分かりませんが、取り敢えずはアーティストやレコード会社からもネガティブな発言は聞かれていなく、順調にプロモーションを行うことが出来ているようです。サウンドプロデューサー兼マスタリング・エンジニアという僕の立場としては、音の最終決済を行う立場でもあるので、その後の世界の市場がどう楽曲・音を評価しているのかは気になるところです。ドイツというのは、テクノ系の音楽では世界を牽引する立場にあるので、それはそれはクリアで美しい次世代の音を作ることに長けています。その彼らの耳というものが、自分のジャッジメントをどう受け止めているのか、非常に気になるところです。 日本のYMOも、アメリカのシカゴテクノも、ヨーロッパ発、特にドイツ・ベルギー周辺の中央ヨーロッパで派生した音楽や音には大きく影響を受けているはずなので、やはり音楽におけるトレンドを最初に作り出すのは、ヨーロッパであると思えることが多々あります。そのヨーロッパ市場が、どう自分を評価するのかを見守るのは、当然の目線ですし責務であるとも思っています。 それ故に、今回このリリースされた参加作品と、多数の楽曲をかなりの回数で聴き比べましたが、参考になるのはやはり欧米の曲のみ。国内の作品になると、全く別物で比較対象として挙げることも難しくなります。ドイツだからではなく、アメリカやイギリスの作品と比べても、また韓国の作品と比べても日本だけ異質に感じます。なので、求められるものも、また別物。この辺りは、日本市場での活動というものを、常に難しくさせるものがあるのですが、僕としては兎に角目の前に与えられる作品を、精一杯こなすことだと思っています。 ピアノもしかり。 Kenが調整して送ってきたスタインウェイの中古グランドピアノは、それはそれは眼を見張るような素晴らしい音がしていました。流石本国のスタインウェイC&A(コンサート・アーティスト部)で、手腕を振るってきただけのことはあります。こういう音は、やはり日本で聴くことは本当に出来ないと感じます。 ドイツから送られてきたパーツを取り付け、発音部を純正とは全く異なる価値で仕上げられたコンプリート・グランドピアノも、勿論フリーハンドで仕上げていく故に、作業する側のスキルは多分に求められますが、それでもやはり根本が欧米の音に生まれ変わります。 なぜにここまで酷く差が出るのか? このあたりの議論は、またコラムで書きたいと思いますが、日本国内で認識されている以上に音の価値を感じ取る能力に、激しい差が生じています。 僕はスタジオワークもピアノ調律もこなすので、双方に考え方も感じ方も異なる故に、一括りにして考えることは出来ないのですが、しかし双方に欧米には全く届いていないことだけは確かです。やればやるほど、極めれば極めようとすればするほどに、その違いというものを露骨に感じるようになってしまいます。 スタジオワークの場合は、楽曲のストラクチャーを一から組み立てていくので、その違いというものがハッキリと出すぎてしまう傾向にありますが、ピアノも理屈としては同じです。ピアノという個体の中で勝負しているだけであって、結局の所はJ-POPなどで聴かれるような、細くて狭い音に終止してしまいます。 この部分は、将来的に埋まるのかどうか・・・ちょっと分かりませんが、僕自身も国内で啓蒙活動を続けていきたいと思っています。最近仕事が多忙な折に、一部外注をする場合には、ほぼ全てをヨーロッパにお願いしているところがあり、国内のエンジニアを外注先として使えないという事実からも、考えさせられるところがあります。仮に欧米で通用するのであれば、勿論国内の人材も使いたいのですが、今知っている限りでは難しいかな・・・という感じです。本格的に、音のセンスを身に着けてくる若者が増えてくれることを願うばかりです。そうすれば、市場ももう少し元気になるかな・・・などということも考えています。

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